Interview

インタビュー

ハイテクから育っていく、情報発信の革命児たち。

2016.01.29 | 商品開発

日本で初めて電子出版業界と教育提携した情報システム学科[e-Book専攻]。今回の対談はその生みの親ともいえるBOOK STYLE PLUS 木下聡一郎社長に、e-Book(電子書籍)の今と未来について在校生の中山玲くんが迫ります。

面白いモノをつくりたい、その情熱が世界を変えていく。

abm00027566中山 初めての授業で見せてくれた「坊ちゃん」のe-Book版が凄くて、ほんと衝撃を受けたんです。どうして20年も前にあそこまでのクオリティのものを作ることができたんですか?

木下 あれを作ったのは1997年かな。ちょうど夏目漱石の原作の著作権が切れる頃で、じゃあそれで何か面白いものが作れないかと。「ルパン三世」のモンキーパンチさんが80年代に「坊ちゃん」をアニメ化していたので、その権利も買って小説と補完しあえるように編集すると面白いんじゃないかと。その他にもどんどんアイデアや情報を盛り込んでいって、一冊のデジタル本、今のe-Bookの原型みたいなものができあがったわけ。

中山 見事に小説とアニメが融合していましたね。それに漱石の書斎がインデックスになっていて、クリックすると「坊ちゃん」の時代の1円の価値がわかったり、小説の中にできてくる言葉の用語辞典があったり、いろんな情報へ飛べて、「坊ちゃん」という小説の世界が自分の中にリアルに広がっていく。あれは今もバイブルですよ。

木下 制作に参加したのは技術者ではなく、グラフィックデザイナーとかエディターとか、クリエーターの集まりだったからね。みんな情熱があったし、自分のアイデアをカタチにすることしか考えてなかったんだ。

中山 なんか黎明期って感じですね。何もないところからあれを作ったのは、ほんとリスペクトです!(笑)

木下 そうだね。見事にゼロからのスタートだったね。だから余計に面白かったんだろうね。

紙から電子書籍へ、時代はあっという間に変わる。

abm00027567中山 今の時代はネットもあるし、タブレットもあるし、先生みたいな先輩もいるし教科書もある。僕たちは恵まれていますね。

木下 昔は本を一冊作って売るのに大変な労力とお金がかかった。出版社という巨大な存在が流通経路を牛耳っていたからね。今はマンガを描くにしても、作画のための便利なツールがあり、できあがった作品をネットにアップすれば誰もが無料のビューワーで見ることができる。いい作品なら課金というカタチで売ることだってできる。ネット上にそういう自由な表現世界が出現して、若い人たちが共鳴して、みんなでシェアして、なおかつ収入を得ることもできる。可能性のすそ野はけた違いに大きく広がっているよね。座談会photo7

中山 紙から電子書籍へ、という時代の流れはやっていてひしひしと感じます。

木下 だからこそ既存の紙にはない「発想」が大事なんだ。電子書籍というジャンルからもっともっと面白い作品を発信していかないといけない。既存の出版社は、自分たちが今、紙で持っているものをそのままデジタル化すればいいと思っている。だからなかなか新しい発想がでてこないし、チャレンジもない。これは非常に残念なことだね。

中山 業界に新しい動きとかはないのですか?

木下 アメリカからkindle(キンドル)という黒船がやってきて、日本の出版業界も危機感を感じている。行政と出版業界が株式会社出版デジタル機構という組織を作って日の丸船団的な取り組みを摸索している。あと印刷会社が紙と電子の両方の書籍に対応したハイブリット書店のサービスを始めたね。そういう試みがもっと多方面から出てくると、もう少し面白くなっていくんじゃないかな?紙がなくなることは無いけど、本とデジタルの世界はこれからどんどん融合していくだろうね。

絵が描けなければ、描かせればいい。マルチな発想ができる人材が必要なんだ。

abm00027568中山 僕は昔から絵やマンガを描くのが好きで、パソコンやネットがあれば何かクリエイティブなことができるんじゃないかと思ってe-Book専攻を選んだんです。学校に入ってから先生たちに刺激されて、カメラを買って写真や動画を撮ったり、自分で作った曲を入れたり、どんどん作りたいものの世界が広がってきていますね。

木下 e-Bookクリエーターというのは、いわばマルチクリエーター。編集者でありながら、映画監督もやりつつ、シナリオライターもやる。すべてがマルチに絡みあってくる。でも、実はそれを全部自分でやる必要はない。中山君は絵が入口だったけど、絵が得意ではないなら絵の得意な人に頼めばいい。音楽ならバンドをやっている友人に頼んでもいい。プロディーサー的にすべてを全体的に見られるかどうかが大事なんだ。僕らが最終的に学んでほしいと思うのは、そういうエディター的な視点なんだ。

中山 自分だけでは限界がありますからね。

木下 絵の描き方を学ぶ場所は他にもあるし、マンガを描いてネットに載せるだけなら個人的に勉強してもできる。しかし様々な要素が絡み合うe-Bookの制作は独学では難しいし、e-Bookに特化した授業を行っている学校は今の日本では“ハイテク”にしかない。

e-Bookを学んだことは、就活でも大きな武器になると思う。

abm00027569中山 そういう意味では僕らはけっこう凄い場所にいますね。

木下 教えているのは私以外にも東京の老舗の編集プロダクションの社長だったり、みんな第一線で活躍しているプロばかり。就職するにしても、既存の「紙の世界」をやってきましたというのと、次の世代の技術である「e-Book」でこんな作品を作っていますというのではアピール度がぜんぜん違う。どちらが採用の人を驚かせるかというと、断然後者だろうね。

中山 僕はまだ就職は決まっていませんが、それは感じますね。すごく新しいことをやっているという感じ。だから就活するにしてもいろいろアピールできると思う。

木下 たとえばキミが恵庭の市役所に入って、あと一人がハイテクに残って、学校と市役所で連携しあったりすると面白い展開になるんだけどなぁ。北海道は気 候的に1年の半分は雪だから各家庭に広報誌を届けるのも大変だよね。それをe-Bookでやったら、もっとスマートな情報発信ができる。動画も入るし、 webともつながるし、地域住民とって親切な広報誌ができるはず。恵庭からそんな広報の新しいスタイルが普及 して、恵庭を北海道のe-Bookの中心地にしていけばいい。しっかりやれば3年後、5年後に実現するのも夢じゃない。どうかな?座談会photo9

中山 面白いですね。ちょっと話が大き過ぎますが…。(笑)

木下 極端な例で言うと、みんなで起業したっていい。北海道e-Book株式会社みたいなものを立ち上げてメディアとか印刷会社に作品を持ってどんどん営業していけばいい。チャンスって通り過ぎたあとに、「あれはチャンスだったな」とか思うのが普通だけど、目の前にあるときに「これはアリだな」と賭けることができる人間は起業して成功する。そのときに失敗しても、技術を持ってやっていれば就職はできるし、潰しもきく。北海道でe-Book革命を起こそうぜ!なんて夢を見られるのも新しい世界を作っていく人間の特権なんだから。

中山 そうですね。先生たちが20年も前に革命を起こしたように、僕らも今のこの時代に新しい風を起こしたいですね。

*****

中山 先生、今日はありがとうございました。

 

  • abm00027578

    木下 聡一郎
    (株)ブックスタイルプラス 代表取締役

    2001年に携帯公式サッカーサイト「超ワールドサッカー」をスタートし、国内に20万人の会員を獲得するなど、常に業界の先端をひた走る企業のリーダー。

  • abm00027577

    中山 玲
    情報システム学科

    [e-book専攻]2年生 北海学園札幌高校出身